外観検査の準備【合否判定基準について】

こんにちは、品質管理ドットコムの山本です。国立大学で修士号を取得し、現在は東証一部上場企業の品質部門にて活躍しています。私の情熱は「品質」にあり、製品品質の評価と品質管理を専門としています。

今回は「外観検査の準備」と題して記事を書かせていただきます。

前書き

目視による外観検査は、人の目に頼ることが多く、ミスや検査員ごとのばらつきが起こりやすい工程です。これを防ぐためには、良いものと悪いものの境界線をはっきりさせることが大切です。ここでは、検査方法や基準、ワークや環境に合わせた検査方法の選び方などを説明します。

検査基準について

検査全般において、検査基準を明確にすることが大切です。特に外観検査のような目で見る検査では、数値で表現するのが難しく、判断基準がわかりにくいことがあります。複数の検査員がいる場合は、すべての人に同じ情報が伝わるようにすることが大切です。そのために、文字や写真だけでなく、「限度見本」「ドットゲージ」などのツールを使って、合格と不合格の判定基準を明確にします。

限度見本

様々な検査で使われる限度見本は、製造された部品や製品と比較するための基準です。カタログのようにパッと見てわかるようになっています。数値ではなかなか表現しにくいため、目で見て比較する必要があります。ただし、限度見本は定期的に更新し、適切に管理することが重要です。

不良見本

限度見本の中でも、不良品の条件を示すものを不良見本と呼びます。外観検査では、大きな変化はわかりやすいですが、小さな変化に気づきにくいことがあります。
また人間の心理として「曖昧なものに対する判断が鈍る」ということがあります。そのため、「これが不良です!」という見本を作っておくことで曖昧さをなくすことができます。このように見逃しがちな不良を不良見本で可視化しておくことが役立ちます。

標準見本

標準見本は、品質の標準を示すものです。製品の標準的な品質を伝えるために使われますが、具体的な良否の限度はわかりません。そのため、どこまでを良品とするかを決めるために、限度見本や不良見本が役立ちます。

ドットゲージ

ドットゲージは、異物や傷の形状をさまざまな面積で示した基準ゲージです。透明なシートに印刷されているため、判断が難しい場合には、直接ワークの上に置いて確認できます。このツールを使うことで、異物や傷を直接比較することができ、ノギスなどでの計測に比べて個人差が少なく、現場で使いやすいです。

【MEMO】 検査環境〜作業台や作業室の明るさについて〜
作業台や作業室の明るさや背景は、目の見え方に影響を与えることがあります。複数の検査員が同じ作業を行う場合や、複数の検査室で作業を行う場合は、すべての検査員が同じ環境で作業をする必要があります。たとえば、検査台や検査室の照度や色温度は、「JIS Z9110 照明基準総則」で定められています。

ワークや環境に合わせた検査方法の選び方

外観検査をするとき、検査する物やその周りの環境をよく考えて、品質をよく保ちながらコストを減らし、生産を効率的にするための一番いい方法を選ぶ必要があります。ここでは、外観検査をどう実施するか決める際にチェックすべきポイントをいくつか紹介します。

全数検査と抜取検査

「全数検査」は、作ったすべての部品や製品を検査する方法です。この方法だと、その部品や製品の品質がしっかり保証されますが、時間やコストがかかりすぎたり、検査をする人のミスが増える可能性もあります。

一方、「抜取検査」は、ランダムに選んだ部品や製品だけを検査して、その結果から全体の品質を判断する方法です。これは時間やコストを節約できますが、抜き取ったサンプルだけの検査なので、全体の品質を完全には保証できません。

インライン検査とオフライン検査

「インライン検査」は、生産ラインの流れの中で検査をする方法で、効率がいいですが、検査に時間がかかるとラインを遅くする必要があるかもしれません。自動化の技術が進んできているので、この方法がよく使われています。

「オフライン検査」は、生産ラインから物を取り出して、別の場所で検査する方法です。細かくチェックできますが、時間や手間、人が多く必要になることがあります。

目視検査と自動検査

外観検査には、「目視検査」と「自動検査」の二つの方法があります。目視検査は人の目で直接確認する方法ですが、全数検査をする場合などには限界があります。そこで、量産品の検査には、センサーや画像処理システムを使った自動検査が選ばれることが多くなっています。

検査方法の選び方

部品や製品の価格や数量、求められる品質、納期などを考慮して、適切な検査方法を選ぶことが大事です。たとえば、安くてたくさん生産するボルトやナットを目で一つずつ検査したり顕微鏡で見たりするのは、効率が悪くて生産コストが高くなってしまいます。

まとめ

今回は「外観検査の準備」について紹介させていただきました。

「もっと詳しい情報が知りたい」や、「こんな情報教えて欲しい」ということがありましたら、お気軽にご連絡ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。興味があれば、他の記事もご覧ください。

タイトルとURLをコピーしました