こんにちは、品質管理ドットコムです。国立大学で修士号を取得し、現在は東証一部上場企業の品質部門にて活躍しています。私の情熱は「品質」にあり、製品品質の評価と品質管理を専門としています。
今回は「品質管理」について解説したいと思います。
品質管理は、製造業などの様々な産業分野において、業績を向上させるための重要な機能を果たしています。しかし、期待通りの結果が得られない場合には、どのような改善措置が可能かが問題となります。本記事では、品質管理の基本的な定義、その業務内容や実施方法について詳しく説明します。品質管理において困難に直面している企業の担当者の方々はぜひ参考にしてみてください。
品質管理とは
そもそも品質管理とはどういうものなのか説明します。(参考/Weblio国語辞典:品質管理)
1. 品質管理(Quality Control)について
- 定義: 品質管理は、製品の製造過程において、一貫して品質を管理し維持する活動を指します。このプロセスは、英語で “Quality Control” と呼ばれ、しばしば “QC” と略されます。
- 目的: 品質管理の主な目的は、安定した品質の製品を生産することです。これには、不良品の発生を未然に防ぐことや、一貫した品質の維持が含まれます。
- 活動:主に社内での品質改善活動を行います。
2. 品質保証との違い
- 品質管理 vs 品質保証:
- 品質管理は製造過程に焦点を当て、製品が一定の品質基準を満たすようにする売り手側の活動です。(社内活動)
- 一方で、品質保証は完成した製品が規定の品質を保っていることを、買い手に対して保証する活動です。この点で、品質管理とは異なり、品質の保証に重点を置いています。(社外活動)
品質管理における3つの管理
品質管理では「工程管理」「品質保証」「品質改善」の3つの管理を行います。それぞれの内容について解説します。
1. 工程管理の実施
- 定義と目的: 工程管理は、製品が効率よく、計画どおりに生産されるように、各工程の進捗と実績を管理することです。
会社によっては「生産管理」や「生産技術部」などと一緒になっている場合もあります。 - 主な業務内容:
- 作業手順の標準化: 生産手順を明確にし、一貫性を保つ。「標準書の作成」
- 品質管理と作業訓練: 従業員に対する品質意識の向上と技能訓練。「品質教育」
- 設備の維持管理: 生産設備の適切なメンテナンスと管理。(生産技術部の場合もあり)
- 工程の正常保持: 生産プロセスの効率化と問題の未然防止。(生産管理部の場合もあり)
2. 品質検証の実施
- 定義と目的: 品質検証は、製品の原材料や部品、生産工程を検査し、製品の品質が基準を満たしていることを確認する活動です。
納入される材料についても手放しでOKというわけではありません。自社製品を作るにあたって必要な品質・性能があることを確認する必要があります。(受け入れ検査) - 主な業務内容:
- 製品品質の検査: 製品が品質基準に適合しているかの検査。「出荷検査/ファイナルテスト」
- 工程能力の監視: 生産工程の品質管理状態の継続的な監視。
3. 品質改善の実施
- 定義と目的: 品質改善は、発生した問題の根本原因を分析し、再発防止策を立てることです。また、将来的な問題の予防も含みます。
- 主な業務内容:
- 不適合の再発防止: 発生した問題の原因分析と改善策の実施。
- 不適合の未然防止: リスク評価を通じた予防策の立案と実施。
ちなみに「再発防止」と「未然防止」は全く違う物なので注意しましょう。
品質管理は、工程管理、品質検証、品質改善という3つの重要な柱から成り立ちます。これらを有効に実施することで、製品の品質向上と生産効率の向上を図り、顧客満足度を高めることができます。
品質管理の業務内容
品質管理は、その業務範囲が広く、多様な活動を含みます。以下で品質管理の主要な業務内容について詳しく説明します。皆さんがイメージする生産工程における品質管理以外にも様々な業務があります。
1. 製品の検査と機器の調整
- 製品の検査: 製品が設計仕様や品質基準に合致しているかを確認する活動。
- 検査機器の調整: 検査に使用する機器の精度を保ち、正確な測定を行うための調整。
2. 異常発生時の原因究明と対策
- 異常が発生した場合、その原因を究明し、再発防止のための対策を講じます。
3. 製造部での品質教育
- 品質管理は製造工程だけに限らず、従業員の品質意識の向上と知識向上のための教育も含まれます。
4. QC工程表と標準書の作成
- QC工程表: 製品製造の全工程を記載した表で、工程内の問題点の把握や標準書作成の基準として使用されます。
- 標準書: 作業手順を定めた文書で、品質の一貫性を保つために重要です。
5. ISO関連事務
- ISO(国際標準化機構): 国際規格を策定し、世界共通の品質基準を提供する機関。ISO関連事務では、これらの規格に基づく品質管理が実施されます。
- JIS(日本工業規格): ISO規格を日本語に翻訳したもの。基本的にISOに準拠していますが、一部異なる場合もあります。
品質管理手法について
品質管理を効果的に行うためには、いくつかの重要な手法を理解し、適用することが必要です。以下で主な手法を紹介します。
1. PDCAサイクルの適用
- 品質管理は一度きりの活動ではなく、継続的な改善プロセスです。
- PDCAサイクルは、品質の維持と向上のために重要なフレームワークです。これはPlan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の各段階から成り立っています。
2. QC7つ道具の利用
- 品質管理には数値データの集計、分析が重要になります。そのための手法としてQC7つ道具と呼ばれる手法があります。
- QC7つ道具は以下のツールを指します:
- グラフ:数値の変化や比較を視覚化。
- チェックシート:データ収集用シート。
- パレート図:主要な問題の原因を特定。
- ヒストグラム:データ分布の視覚化。
- 特性要因図:問題の根本原因の分析。
- 散布図:変数間の関係性の分析。
- 管理図:プロセスの変動の監視と管理。
- これらのツールは、製造現場の課題を明確にし、改善策を導くのに役立ちます。
3. SQC(統計的品質管理)の実施
- SQC(Statistical Quality Control)は、統計的手法を用いた品質管理のアプローチです。
- 従業員、材料、機械装置の品質への影響を統計的に分析し、品質基準を設定し管理・改善します。
適切な品質管理に向けた重要な要素
品質管理における効果的なアプローチを理解するためには、以下の5つの重要な要素を習得することが不可欠です。
1. IE(インダストリアルエンジニアリング)
- IEは、「生産工学」または「産業工学」として知られています。
- 製品の質と量の向上を目指し、予算管理、生産技術、設備、資源開発、改善プロセスなどを工学的手法で実施します。
2. 品質管理の5S
- 5Sは、効率的な作業環境のための基本原則です。
- この概念は以下の5つの要素で構成されます:
- 整理
- 整頓
- 清掃
- 清潔
- しつけ
この5Sを徹底することで作業のミスや無駄がなくなり、品質向上だけでなく作業効率の向上も行えます。
3. 品質管理の4M
- 4Mは品質管理における重要な分類法です。
- この方法では、品質管理に影響を与える4つの要素を考慮します:
- 人(Man)
- 機械(Machine)
- 材料(Material)
- 方法(Method)
4つの要素のうち1つでも管理から外れてしまうと品質低下につながります。
4. TQC(Total Quality Control)
- TQCは「全社的品質管理」を意味します。
- 組織全体での品質管理に取り組むことで、顧客の視点に立った製品やサービスの提供が可能となります。
5. TQM(Total Quality Management)
- TQMは、TQCの原則を経営戦略に応用したものです。
- 経営層から現場に至るまで、全社的な視点で品質管理を統合し、トップダウンで実施します。
品質管理のポイント
品質管理を適切に行うためには要点を押さえておく必要があります。品質管理のポイントを2つ解説します。
1. 品質管理のIT化
- 近年、製造業におけるIT化が急速に進展しています。品質管理分野でもこの傾向が見られます。
- IT化のメリットは多岐にわたりますが、特にデータ共有の容易さが部門間の協力を促進し、効率的な運営に寄与します。
- 製造現場の情報が透明化されることで、品質の最適化に繋がると期待されています。
2. データに基づく品質管理
- 製造現場で収集されるデータの活用は、品質管理において重要です。
- 収集したデータを分析することで、作業工程における無駄や欠陥を特定し、生産性の向上や精度の改善が可能となります。
- 従来、直感や経験に依存していた部分をデータに基づいて行うことで、作業の均一化や効果的な品質管理に寄与します。
品質管理のIT化とデータの活用は、製造業における品質管理の現代的なアプローチです。
これらの手法を適用することで、透明性、効率性、そして精度の高い品質管理を実現できます。教育や研修を通じて、これらの方法を理解し、適切に取り入れることが推奨されます。
まとめ
今回は「品質管理」について解説しました。
品質管理は、製品が生産される過程における品質維持と管理のための活動を指します。この分野での作業は多様であり、一貫して安定した品質の製品を生産するには、企業全体の協力と統一された取り組みが不可欠です。
さらに詳しい情報やご質問がありましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。今後も皆様のお役に立てるよう、有益な情報を提供してまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。